アンティグア
大きく8つに分けられるグァテマラのコーヒー産地の一つで、同時にグァテマラのブランド名の一つでもある。アンティグアコーヒー。
グァテマラの南中央付近に位置する5000フィート級(1500m以上)の高地で、アカテナンゴ山、フエゴ山、アグア山の三火山に囲まれた渓谷でもある。豊富なミネラル分を含んだ火山性土壌を持ち、気候は乾燥している。日照時間が長く、昼30℃夜0℃など、寒暖差の激しい地域であり、これらがアンティグア特有の明るく華やかな酸を生み出しているとされる。他の地域と同様シェードツリーを用いて雨季の雨と冬の霜からコーヒーノキを守っている。栽培される品種の多くはブルボン種で、次いでティピカ種などが続く。
グァテマラで最も古い産地であると同時に古くから最高級品として名高く、明るい酸と濃厚なコクと甘さ、バランスの良さが高く評価されている。一時期アンティグア産を名乗るまがい物が流通したことがあるほどで、これに対しアンティグアの生産者たちは自身のブランドと品質を守る為2000年にAPCA(アンティグア生産者組合)を設立、同地域で生産されたコーヒーに証明書と麻袋用の専用のロゴ(マーク)を発行するアペラシオン制度を開始した。現在では布袋に「Genuine Antigua coffee」のマークがあり、一目でアンティグアコーヒーであると判断できるようになっている。なおアンティグアは最低標高5000フィート(約1500m)を超える地域である為、等級はすべて必然的にSHBとなる。
アンティグアとは「古い」という意味だそう。同地域にはラ・アンティグア・グアテマラ(La Antigua Guatemala=古いグアテマラ)という名の都市があり、ここは1543年のスペイン人コンキスタドールによる設立から200年以上の間サンティアーゴ・デ・ロス・カバジェーロスという名のグァテマラの首都であった。その後、1717年及び1773年に起きた大地震により壊滅的な被害を受け1776年に現在の首都ガテマラシティ(シウダ・デ・グアテマラ /正式名称ラ・ヌエバ・グアテマラ・デ・ラ・アスンシオン)へ遷都、以降アンティグア・グアテマラ(あるいは単にアンティグア)と呼ばれるようになった。首都ガテマラシティから西へ車で約1時間ほどの位置にあり、現在はユネスコの世界遺産に登録され、古い教会・修道院、大聖堂を臨むグァテマラ有数の観光地となっている。
なお近く(カリブ海)にアンティグア島というものもあるが、こちらはイギリス連邦に属するアンティグア・バーブーダという別の国の一部。
関連用語 グァテマラ
アーシー
「土のような」「大地のような」という意味の語。コーヒーの風味を表す言葉。
収穫や精製の過程において土壌から吸着したその土地特有の香りのこと。収穫時にコーヒーチェリーを直接土に落としたり、精製の乾燥段階においてパティオなどを使わず土の上で乾燥させた場合などに豆に移る土の香りを指す。多くの場合「土臭さ」「汚れたような」というネガティブなイメージで使われる。泥水とは少し違う。
一方でマンデリンやインドネシア産のコーヒーの風味特性をアーシーやエスニックアーシーと表現する向きもある。また、雨の日の香り、大地を思わせる香り、沸き立つ地の香り、野生的な香りなどとし、好意的な意味で使う人もいる。
アーモンドチョコレートコーヒー
エスプレッソにチョコレートとアーモンドを加えたドリンクのこと。
エスプレッソ、生クリーム、チョコレートシロップ、アーモンドパウダーなどで作る。削ったチョコレートやアーモンドシロップを加えたり、生クリームをホイップする場合もある。ミルクに変えても良い。
ホイップクリームの場合カフェモカにアーモンドを加えた飲み物という言い方も出来る。
あるいはアーモンドとチョコレートの香りをまとわせたフレーバーコーヒーのこと。家庭ではさらに適当にドリップコーヒー+アーモンドエッセンス+チョコレートシロップで作ったもののことも言う。正式なメニューとしてエスプレッソ系の店舗にあるわけではない。
イエメン
中東アラビア半島南部に位置する共和制国家。イエメン共和国。エチオピアと並びモカコーヒーの生産地として知られる。世界でも特に有名なコーヒー生産地でありながら意外なことに長らく国際コーヒー協定には参加しておらず、2007年に漸く加盟した。
コーヒーは原産地とされるエチオピアから順に伝播していったとされるが、その最初の土地がイエメンである。同国の南西部に位置する紅海沿岸にある「モカ港」がモカコーヒーの名の由来とされ、古くはイエメン及びエチオピアで生産されたコーヒーはここを起点に世界中に輸出され、コーヒー文化は広がっていった。この為「モカコーヒー」の名と共にコーヒー生産地として非常に有名ではあるが、現在モカ港は閉鎖されている。
国土の大部分は砂漠地帯である為農業は盛んではないが、内陸部は最大標高3000に達する山岳・高原地帯であるためコーヒーの生産に向く。中でもサナア市西部のバニーマタル地方の段々畑で生産されるコーヒーは「モカマタリ」と呼ばれ、高級品とされる。
栽培品種は全てアラビカの在来品種であり、ダワイリ、トゥファーイ、ウダイニ、ブラーイなどがあるが概ね纏めて「モカ種」と呼ばれる事もある。(なおモカ種という名の栽培品種もあるため混同に注意)
精製法式はナチュラルのみ。また、厳密な輸出品質管理機関が存在せず、格付けは産地名の表記と各地方で自由に付けられているため、世界でも飛びぬけて欠点豆が多い事でも知られる。例えばモカマタリの場合、「No.」表記による格付けがされており、No.9~No.6があるが、最高品質品とされるNo.9であっても概ね20%~30%前後の欠点豆が含まれ、マタリの中でも再高級品といわれる「アール・マッカ」であっても10%前後。人気の高い豆でもある為、コーヒー屋泣かせの豆といわれる。
産地名による品質評価はマタリ→シャーキ=サナア→ホディダの順。生産量はマタリ10%、シャーキ15%、サナア25%、ホディダ50%程度とされるが、日本に入ってくる殆どはマタリであり、稀にサナアがある程度。
なおコーヒーの生産量は最盛期である18世紀に比べ大幅に減少している。代わりに、同じくエチオピアから伝えられた「カート」と呼ばれる軽い覚醒作用をもたらす植物の生産量が増加している。カートはコーヒーと栽培適地が被るが、コーヒーと違って鮮度が重要な為、輸出には向かず国内で消費されている。このカートを嗜好品と見るか麻薬の一種と見るかは国によって様々だが、イエメンでは酒やタバコが禁止されている為、その代用嗜好品として一般的である。なおイエメンでは原則として輸出は禁止されている為コーヒーと違いが以下取得に貢献しないが、エチオピアでは輸出されている。
2015年現在、国内情勢は極めて悪く、イエメン全土に対し避難勧告及び渡航延期の勧告が出ている。
イエローブルボン
本来コーヒーチェリーは赤く色づくが、稀に黄色に色づく物がある。これをアマレロと呼んだりイエローと呼ぶ。
その中でもイエローブルボンは名前の通り黄色に色づくブルボン種のことを指す。おそらくイエローの中で現在最も流通量が多い物だろうと思われる。取り分けブラジルの物が有名。
別名ブルボンアマレロ。アマレロの項も参照されたし。
→アマレロ